20200422

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春も半ばを過ぎ、路上には躑躅が、庭々には藤が満開しつつある。 躑躅というのは不思議な花で、その鮮烈な色あいが植物というよりむしろ動物、それも肉食の猛獣のような緊張を感じさせる。

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中国古典では躑躅と書いててきちょく(スル)と読ませることがある。ためらい足を止める、今で言う躊躇と似た意味あいである。 確かに、夜道で不意に躑躅の小籔に出くわすと、ハッと体が硬直してしまうときがある。

肉食の猛獣に睨まれたかのような、妙に不安な感じがするのだ。 無論、これらは浅学者の強引なこじつけであると断っておく。わたしは躑躅(てきちょく)と躑躅(つつじ)の関係など知らない。

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ところで、今回の騒動で大学の建物が全面的に閉鎖してしまい、総合図書館に通うこともできなくなってしまった。本を読めないとどうしても脳の働きがぎこちなくなる。

通販で買うのは気が進まなかったが、ついに先日、意を決して「樋口一葉の手紙教室 (ちくま文庫) 」の中古本を注文した。これは樋口一葉が生前唯一出版した「通俗書簡文」の解説本で、敬語の使い方に悩んだときに引ける本として、以前から手元に置きたいと考えていたのだ。

敬語は難しい。難しいのに、インターネットには意味不明なビジネス敬語が跋扈していて調べれば調べるほどに混乱する。しかし、樋口の使う敬語なら間違いはないだろう。読み物としての面白さも十二分なはずだ。週末には届くとのことで、読むのが待ち遠しい。

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